サイトワールド2011におけるヘレンケラーホンとIPPITSU(いっぴつ・一筆)シリーズ

 毎年、11月初旬に、視覚障害者関係の講演や展示会のある「サイトワールド」が、JR錦糸町駅前のすみだ産業会館で開催されました。

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 今年は、11月1日(火)から3日(木)までの3日間でした。
 私は、毎年このイベントに桜雲会から体表点字ヘレンケラーホンのテーマで参加してきましたが、今年は1日と3日の2日間、9階の広い第3会議室を専用で行なうことができました。




 今年の出展の特徴は、「IPPITSU」(いっぴつ・一筆)シリーズを加えたことでした。

 ヘレンケラーホンは、体表点字の盲ろう者用電話への応用ですが、この全体について、佐々木信之先生(筑波技術大学)、大墳聡先生(群馬工業高等専門学校)と私が説明を行ないました。


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 視覚障害者のスマートフォン利用のIPPITSUシリーズには、IPPITSUとIPPITSU8/2Rとがあります。これは、弱視の人でも分かりやすいように画面の大きなGALAXY Tabで行ないました。


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IPPITSU ‐ タッチパネル点字一筆式入力
    ・ 牛田啓太(群馬工業高等専門学校 電子情報工学科)
    ・ 阿佐見 聡士(群馬工業高等専門学校 電子情報工学科;現・筑波大学)
    ・ 長谷川貞夫(社会福祉法人 桜雲会)



 IPPITSUの原理は、スマートフォンの画面の枠を点字盤の1マスの枠に見立てて点字の6点を配置し点字式に通常の文字を入力する方法です。

 この方法は、ヘレンケラーホンにおける、6個の携帯電話のボタンを点字の6点に見立てる入力方法の経験から開発したものです。
 ですから、IPPITSUは、ヘレンケラーホンの研究なしには到達できなかったものです。



 「IPPITSU 8/2R」は、IPPITSU開発から、点字を別の観点から入力する方法はないかと比較研究のために開発したものです。このように、よりよいものを求めて研究を進めつつあります。


IPPISTU 8/2R 文字入力方法の解説
    ・発案・著作 桜雲会理事 長谷川貞夫
    ・開発製造・共同著作 TM研究所 武藤繁夫


 「8/2」とは、8進数2桁の意味です。「R」は、文字を書道の草書のように文字を一筆で連続に書き続けることができるという意味です。

 つまり、IPPITSUは、1マスの一筆だけでなく、各文字も続けで連続に書くことができるのです。「R」は、「連続」の頭を「R」で表現したのです。

 点字の6点は、左右の3点ずつの2列よりなります。
 この左列を2進数で表現しますと、上の点の重みは1です。
 上から2番目の点の重みは、その2倍で2です。3番目は、更にその2倍で4です。右列も同じに数えます。


 ・マスアケは、両列に点がないから「00」です。「あ」は、左の上だけに点があるから「10」です。
 ・左の上から2番目の点は、2の重みですが、仮名の、はねる「っ」ですが、その右に点がないので、「20」になります。
 ・3番目の点は、2の重みの更に倍ですから4です。・仮名の「わ」は、左の3番目ですから、右に点がないので「40」です。

 ・仮名の「い」は、左の1番目と2番目ですから重みは合わせて「30」になります。
 同じく「に」は、上・中・下の3点ですから重みは合わせて「7」です。

 この縦の3点は、2進数の3桁ですが、左列として0から7までの8進数で表現できます。そして、1マスは左右の2列ですから、この左右の列を8進数の2桁と考えて、00から77までの8進数で表現できます。

 具体的な点字式入力方法は、短針と長針の時計の針として考えると分かりやすいです。


 まず、点字の左列として短針を時計の中心から数字にたどるようにして入力します。そして、指を画面から離さないようにして書き続けます。

 通常の時計は、短針が1週すると12時間で、数字は1時から12時まであります。12時は0時でもあります。
 長針は、各数字が5分ずつで1週すると60分の1時間です。

 8/2Rでの時計の形は、8進数時計です。ですから、数字は0から7までですが、通常の時計と異なり、数字は0からスタートしています。そして「8」の数字は文字盤にはありません。


 点字の「あ」は「10」ですから、マスの左列の上に点があって、右の列には点がありません。
 それで、「あ」を書くのには、時計の中心、つまり短針と長針の軸に指を接して1の数字に行き、指をそのまま画面から離さずに中心に戻って、次に数字の0に行き、また中心に戻ります。
 これで「あ」が書けます。ここで指を離してもよいのですが、指を離さずに、そのまま次のマスも書き続けると連続の「R」になります。草書で文章を書くのが速いのと同じに、Rですと、点字を、つまり、文字入力ですから、文字を速く書くことができます。


 点字で「あめ」(雨)は最も覚えやすい点字です。
 「あ」は、点字の左の上方の1点です。
 「め」は、左右に全部点があります。
 点が全部あると77ですから、時計の中心から7に行き、また中心に戻って7までを往復すれば、「め」になります。 「あ」から指を離さなければ、草書での「あめ」を書いたことになります。
 ここでは省略しますが、このような要領で漢字の「雨」を草書のように書くこともできるのです。

 以上、点字の8進数表現などと、日常には使わないことを書きましたが、これを通して次の、もっと便利な段階に進めるのです。



 ルイ・ブライユの発明した点字について、これまでに先入観がありました。
 それは、点字は視覚に障害のある人の専用の文字であり、また、それは指で読む文字であるということでした。
 しかし、私は、点字は文字であり、また、同時にコンピュータの符号を兼ねる他にはない、優れた文字であり、また符号であると考えます。

 一昨年の2009年は、ルイ・ブライユ生誕200年の記念する年でした。ブライユは、その大きな業績にもかかわらず、生前にはその業績も理解されず不遇な生涯でした。

 今は、彼の誕生から200年を経た21世紀です。
 そして、コンピュータのICTによる時代です。

 私は、彼の点字を健常者も、情報に最も恵まれない盲ろう者にも便利に利用できる情報システムの一つの核にしたいと願っています。